ソリューション事例

繊維廃材に新しい命を吹き込む、
国内循環モデルの構築。

Background

ソリューションの背景

手放された衣類の65%が、廃棄されてしまう日本。

循環型社会を目指す取り組みが叫ばれていますが、リサイクル率の向上はまだまだ日本の大きな課題です。日本で流通している衣類の多くは、リサイクルやリユースなど再利用されることなく廃棄されています。例えば2020年に新規供給された衣類約82万トンのうち、約65%の51万トンが再利用されることなく廃棄されたとのデータがあります。(※)またリサイクルされたとしても、その多くは燃やして熱エネルギーを回収するサーマルリサイクルです。 衣類は様々な素材の複合物のため、素材ごとの選別が難しく、再利用が困難となっています。
衣類の再利用策の推進はアパレル業界にとってはもちろん、繊維メーカーである東レにとっても喫緊の課題です。

  • ※日本総研「環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務 -『ファッションと環境』調査結果-」

Our Solution

東レインターナショナルが提案したソリューション

国境を越えて生み出したアップサイクルの「地産地消システム」。

天然、化学、複合など繊維素材の種類を問わない再利用の手法はないか——その模索の中で出会ったのが、台湾・WYNIST社の技術です。樹脂と混合することで、あらゆる繊維廃材をボードや複合ペレットといった素材に生まれ変わらせることができ、海外ではアパレル什器やファーストフード店の化粧板などに幅広く活用されています。そこに大きな可能性を感じ、当社はWYNIST社の日本における事業パートナーとして契約を締結。日本で排出された繊維廃材を海外に任せるのではなく、国内でアップサイクルできる「地産地消システム」を構築しました。

Interview

ケミカル部パフォーマンスケミカル課
2021年入社

先行者にはなれない。それでも、挑む意義がある。

果たして私たちが手がけるべき事業なのだろうか——実を言えば、社内ではそんな議論がありました。既に数社が同様の素材で市場に参入していたからです。けれどその答えは、間違いなく「イエス」でした。
まず私たちはWYNIST社の技術を展示会で紹介しました。その時に肌で感じたのは、お客様からの強い期待です。アパレル業界は小売だけではなく、メーカーや工場も繊維廃材への対応に苦慮されていました。試験工程で出る端材、B品、サンプル生地など世の中に供給される前に廃棄される繊維も少なくないからです。お客様がその現実と環境に対する課題意識との板挟み状態であること感じました。
すでに東レグループでは、ペットボトルからのリサイクル繊維、ケミカルリサイクル繊維、バイオマス繊維など多くのサステナブルなソリューション技術、製品を展開しています。しかし、活動を進めていくなかで、ソリューションの選択肢をひとつでも多く提示することが繊維メーカーのグループ会社として重要だと改めて気づかされたのです。

私たちは先行者を競争者ではなく、広い意味で同じ道を進む開拓者と捉えています。世の中にこの新しいアップサイクルソリューションを当たり前の選択肢として、定着させていきたいです。

展示会のたびに出会える、新しい可能性。

現在、このソリューションは展示会を中心に認知向上を図っています。そして、想像以上の可能性の広がりに私たちも驚かされています。私たちは親会社である東レの原料調達を通じて、繊維系のサプライヤと広くコネクションを築いてきました。そのため、アパレル業界関係会社だけがこのソリューションの提供先であると思い込んでいました。けれど展示会では、たとえばホームセンターや家電メーカー、インテリアデザイナーといった思いがけないニーズに出会えました。つまり、繊維廃材から生まれた素材そのものに興味を示すお客様もいらっしゃったのです。これまでは、同様のアップサイクルに使われる素材といえばサトウキビやトウモロコシなどの植物系が中心でした。繊維素材はそれだけで目新しさがあり、しかも独特のテクスチャを持っています。繊維の配合レベルを調整することで、意匠性をコントロールすることもできます。この魅力が伝われば、繊維とは関係のない分野にまで提供の可能性が広がっていく。廃材の有効活用の手段としてだけでなく、素材自体に魅力を感じてもらえることを知って、私たちも期待を新たにしています。

リサイクル製品があたりまえに選ばれる社会を。

新しい樹脂でつくった製品と、リサイクル素材でつくった製品。同じモノなら、リサイクル製品のほうが製造コストは高くつくのが一般的です。それが販売価格に反映されれば「環境のためとはいえ、わざわざリサイクル製品は選ばない」というのが消費者心理ではないでしょうか。それを変えることが、私たちのゴールのひとつです。私たちが力を尽くすことで繊維廃材のアップサイクルを行う企業が増え、その活動が世の中に知られていく。それがきっかけでリサイクル製品を手にとる消費者が増えれば、普及によるコストダウンがなされ、さらなる普及へとつながるかもしれない。「繊維はアップサイクルできる」という認知の浸透によって、これまでは服を可燃ゴミにしていた方が、資源回収に出すようになるかもしれない。時間はかかると思いますが、そんな循環まで日本に根づかせることができたら。そのためにも、影響力を持つ企業とのタイアップや自治体との連携など、さまざまな手法を視野に入れながらこのソリューションを拡大していきたいと考えています。

繊維廃材のアップサイクルTriTri

テキスタイルボード

Board

  • 繊維含有率60%以上、残りはエポキシ樹脂
  • 寸法:900mm×1800mm×3/6/9mm (36判)
  • 含有繊維の素材に制限なし(天然・化繊)
  • 繊維の色を活かし、染料・塗料は不使用
  • 什器、雑貨、装飾品への用途展開を期待

マスターバッチ

Master Batch

  • 繊維含有率50%以上のペレット
  • さまざまな樹脂とコンパウンド可能
  • 繊維含有率20%複合ペレットもご用意
  • 含有繊維の素材に制限なし(天然・化繊)
  • 金型成型に最適

グリーン・エンラージ
循環型社会の実現、環境負荷・食糧問題などの解決に貢献する「環境配慮型化学品事業」のプラットフォームです。
東レグループおよび国内外パートナの素材・技術を融合、ソリューションを創造する場として拡大してまいります。
第一弾としてWYNIST(台湾)と協業し、繊維廃材を活用したアップサイクル製品「TriTri™」を展開。
日本国内の繊維廃材に新しい価値を提供します。