ソリューション事例

ものづくりの力と、素材のレガシー。
その両翼でアップサイクルを推進。

Background

ソリューションの背景

アパレルビジネスが突きつけられた環境課題

アパレルビジネスは、国連貿易開発会議(UNCTAD)の調査によって「世界で2番目の環境汚染産業」と指摘されています。メーカー・生産者・消費者が、環境負荷の軽減を一体となって推進していけるような仕組みづくりが求められています。

Our Solution

東レインターナショナルが提案したソリューション

画期的なアップサイクル製品の事業化

東レが1941年に世界に先駆けて開発した『ナイロン6』。そのうち滞留在庫となっていたものを、『アップサイクル・ナイロン6』として活用。原料に戻すリサイクルではなく、素材に新たな価値を付加する「アップサイクル」によって、象徴的かつ身近な製品に生まれ変わらせます。アパレル製品の生産ラインを有し、かつ素材メーカーである東レ株式会社と密接な関係にある東レインターナショナルだからこそ、手がけられる事業です。

Interview

アパレル製品第2部 事業開発課
2001年入社

廃棄量世界1位。日本の傘を、アップサイクルの象徴へ。

世界的に進む、サーキュラーエコノミーへの転換。2030年には、市場規模が4.5兆ドルにまで達すると試算されています(※1)。新たな成長市場であるとともに、サステナビリティの向上にも直結するこのムーブメントの中で、東レグループもさまざまな挑戦に乗り出しています。その成果の一つが、私たちが生み出した『TSUTSU the Umbrella 621』。日本でも広がりはじめたアップサイクルの概念を、「世界一のアンブレラ製品」を標榜して形にしました。傘の廃棄量が世界一だといわれる日本(※2)。その年間消費数は、じつに8,000万本以上にのぼると推計されます。大量生産・大量消費の象徴となってしまった傘を、「愛着感があり、壊れにくく、繰り返し使える」ものに生まれ変わらせたい。そのための提案こそが『TSUTSU the Umbrella 621』なのです。

※1 経済産業省 2023年9月「資源循環経済政策の現状と課題について」
※2 日本洋傘振興協議会「傘の年別輸入推移、財務省貿易統計」

最終製品のリリースを通じ、アップサイクル事業をプラットフォーム化。

『TSUTSU the Umbrella 621』には、東レグループのレガシーと未来への願いが詰め込まれています。生地のベースに選んだのは『ナイロン6』。ナイロン6とは、1941年に東レが世界に先駆けて開発に成功した、合成繊維の代表格ともいえる素材です。このうち、アパレル製品の生産や開発・流通によってどうしても発生する生地のロス。それらに東レグループ独自の耐久撥水加工を施し、傘生地に採用しました。リブやシャフトといった構成部品は、これもまた東レが1971年に販売を開始した、軽くて強くて錆びない『カーボンファイバー』製。使用シーンを思い描き、機能性やデザインにも徹底的にこだわりました。こうした企画・開発に始まり、品質保証、プロモーション、販売に至るまで、私をはじめとするプロジェクトチームのメンバーたちが一貫して関わっています。ゴールは製品をリリースすることではなく、東レの「アップサイクル事業」としてプラットフォーム化し、世の中に認知してもらうことにあったからです。

サステナビリティ・ビジョンを起点に、さらなるソリューションを。

『TSUTSU the Umbrella 621』は、一つの始まりです。その製品化によって確立されたプラットフォームを通じ、廃棄物削減に貢献できるソリューションを次々に生み出していくことが私たちのミッションです。東レグループはサステナビリティ・ビジョンを掲げ、「サステナビリティイノベーション製品の供給」を重要なテーマの一つに設定しています。今回のソリューションはそのテーマに合致していたことから、東レグループの各所に支えられて推進できました。また、問題意識が強く、仲間と応援し合うマインドを持ったグループメンバーの頼もしさや、貿易や法律上の広範な手続きをカバーしつつ、期限内に膨大な業務を完遂できるスタッフの底力を再認識することもできました。東レインターナショナルのこうした強みを集積させることで、世の中に貢献できるソリューションをもっと生み出せる。そう信じています。