
持続する快適。
世界にまだなかった分野の、
始まりにして到達点を。
野沢室長
強みのすべてを、一着のガーメントへ。
3DeFX+Ⓡの開発は、2010年ごろに始まりました。その数年前から、ダウンジャケットが再び注目を集めるようになっていたこと。一方で、羽毛価格が高騰し、さらには動物由来の素材そのものを使わない「アニマルフリー」の思想が世界的に広がりつつあったこと。こうした背景から、羽毛に代わる中綿を開発しようとしたのが発端でした。
ただ、羽毛の保温性を再現しようとした中綿はすでに世に存在している。その後追いをしても、差別化を図ることなどできない。そこで私たちが定めたのは、生地、中綿、そして縫製技術という私たちの強みを一体化させたガーメント——つまり「服そのもの」を開発し、ブランド化するという方針でした。

アクティブでいるための、保温性と通気性。
保温性能がダウンジャケットの「標準装備」だとするなら、私たちがさらに付加したのは「アクティブに動ける」という価値です。体が激しく動いても、服がちゃんと追従してくれる。それでいて、シルエットの美しさが崩れない。中綿が飛び出すこともない。さらに保温性についても、ただ温かければいいという発想を捨てました。高い通気性によって余分な熱を逃し、快適な温度に調整してくれる——いわば、レギュレーターとしての役割を目指したのです。
試作と調整を繰り返しながら、妥協することなく理想を形にした3DeFX+Ⓡ。それはセンセーションとともに迎えられました。「非常にエキサイティングな製品だ」。アメリカの有名アウトドアブランドからは、そう激賞するメールが届きました。また、別のとある有名ブランドは「素材だけを仕入れ、自社で最終製品化する」という慣習があったにも関わらず、「3DeFX+Ⓡはあまりにもイノベーティブだ」という理由からそれを覆し、ガーメントとしての採用を決定。東レグループにとっても前例のない契約でした。

ふさわしい品質を、サプライチェーンごとつくる。
評判が広がるなか、「中綿だけを売ってほしい」という打診も少なからず寄せられました。けれど私たちは、基本的にお断りさせていただいています。3DeFX+Ⓡの優れた性能は、生地、中綿、縫製のすべてが高いレベルで融合したガーメントにおいてこそ発揮されるものだからです。3DeFX+Ⓡがリリースされて以降、アウトドア業界には「アクティブインサレーション」——保温性と通気性を両立したウェアを指す言葉が生まれ、ジャンルとして定着しました。類似する製品も次々に発売されています。それでも私たちが「3DeFX+Ⓡが最高峰」と胸を張れるのは、ガーメントであることを貫いた結果だと自負しています。
さらに3DeFX+Ⓡは、その品質向上のためにサプライチェーンまでも一新させました。リリースされた当初、3DeFX+Ⓡは世界中にある東レの在外拠点がそれぞれに発注を行い、それぞれに生産を管理していました。ただ、この状況では品質にばらつきが出る恐れがある。そこで生産拠点を限定し、一元管理できる体制を整えたのです。この変更によって品質を高く維持できるようになったのはもちろん、生産ロスの低減や物流の絞り込みによるCO2削減など、いくつもの効果が生まれました。この体制は3DeFX+Ⓡ以外の製品にも広がり、東レ製品の合理的な品質向上に貢献しています。

時代を見つめれば、進化は止まらない。
時代とともに、3DeFX+Ⓡも進化しています。サステナビリティの追求は、その代表例といえるでしょう。たとえば中綿においては、リサイクルされたポリエステル繊維を導入しています。縫製では、2022年に建てた縫製工場でLEED認証(※)を取得。この工場をフラッグシップとして、環境対応がサプライチェーン全体に広がっていくことを期待しています。
※LEED認証:米国グリーンビルディング協会による建築物の環境性能に対する認証
ただ、私たちは「一着を長く愛用していただくこと」もサステナビリティだと考えています。リサイクル繊維を使用することだけにこだわれば、機能性が損なわれ、着用期間を短縮してしまう可能性もある。リサイクル繊維の使用比率を高めながら、同時に機能性も維持するための開発にも力を注ぐ。そのバランスのうえで、3DeFX+Ⓡらしいサステナビリティを成立させていく。これからも3DeFX+Ⓡは、ジャンルの始祖であると同時に先端を進む存在として、革新を続けていきます。
